Simple Site

ラジエルの書第四十九巻―神と天使と人形―  1

 グロムナート王国の職人通りに、みすぼらしい二人の男がいた。
 一人は四十代の老けた男で、いつも数体の人形を抱えてそこへやってきた。人形師らしきその男は、あまりできの良いとは言えない人形を毎日売り歩いていた。
 もう一人の男は二十代前半の若い青年だった。ボロボロのコートを身にまとい、格好だけは画家らしくしたいのか、頭にはつぎはぎだらけのベレー帽を被っていた。
 道行く人は時々、男のキャンバスに描かれた絵を覗き込み、感心したように頷いたりした。しかし、絵を買う者は滅多にいなかった。男の描く絵は上手かったが、それだけだった。
 また一人、客がキャンバスから離れて行った。
 老けた男がヘラヘラ笑いながらキャンバスを指差す。
「エリオットよぉ、お前の絵、いつまでたっても売れないな。こんなにキレイなのによ」
 若い画家エリオットは気を悪くした様子もなく、自分も男と同じようにヘラヘラ笑った。
「じいさんの人形だって一つも売れないじゃないか。そんな気持ちの悪い人形じゃなくて、たまには可愛い女の子でも作ったらどう?」
 男はじいさんなどと呼ばれても全く気にしなかった。実際、男の容姿はじいさんそのものだった。実年齢より十は老けて見えると、エリオットがいつもからかっていたのだ。
「この人形のどこが気持ち悪いってんだ」
「なんかさ……じいさんが作る人形ってどれも呪いの人形みたいで……えっと……僕なら欲しくないかな」
 エリオットはおもむろに、じいさんが作った人形の一つを手に取ってみた。
 見れば見るほど気味の悪いその人形は、口が裂けていて目は虚ろ。呪術に使う以外に使い道はないと思われた。もっとも、エリオットはその呪術というものがどういうものなのかは知らないが。
 だがこの呪いの人形は、当然だが欲しい人にとってはかなり価値のあるもので、エリオットは前にそれが金貨一枚で買われていくのを見たことがあった。
 じいさんは上機嫌でエリオットに三日ぶんのパンを買ってくれたが、それももう一ヶ月以上前の話であった。
 二人の唯一の自慢はもはや、どんなに生活が苦しくても盗みにだけは手を出したことがないということくらいだった。
 そしてまた一人、若い女がエリオットのキャンバスの前から去って行った。
「明日は少し場所を変えてみねえか。この辺はもう駄目だ」
 これ以上ここにいても何も収穫がないと思ったじいさんは、呪いの人形を片付けながら言った。
「そうだね。明日はもっと人の集まる場所に行ってみようか」
 エリオットはキャンバスの絵を見つめて、ふっとため息をついた。
 そんなエリオットを励ますように、じいさんは優しくエリオットの肩を叩いた。
「そんな顔するなって。お前の絵を気に入ってくれる連中なんてたくさんいるさ。オレの人形だってたまにゃ売れるんだからよ」
 じいさんが笑うと、エリオットもつられて笑い出した。別にじいさんを馬鹿にしたわけではない。その心遣いが嬉しかったのだ。
「じゃ、明日もいつもの時間な。もっと自信持てよエリオット」
「ありがとうじいさん。また明日」
 じいさんはひらりと手を振って、ふらふらと人混みの中に消えて行った。
 残ったエリオットはそれから二時間ほど粘ってみたが、その日は絵が売れる様子がなかったのでようやく重い腰を上げる決心をつけた。
 道端に並べたキャンバスを片付けながら「今日は売れると思ったんだけどな」と、いつもと同じ独り言を呟いた。
 そして、エリオットが湖畔にある小さな家に辿り着いた頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。
 エリオットの両親が亡くなってからは、この家にはエリオット一人しか住んでいない。小さな家だが、エリオットはこの場所が気に入っていた。街からは比較的近いし、北の方角にはアポロン神の神殿が見えるのだ。エリオットが今まで餓死せずに生きてこられたのは、もしかしたらアポロンの慈悲があったからではないかと密かに思っていた。
 肝心の家の中には絵を描く道具と必要最低限の家具以外何も見当たらない。
 エリオットはテーブルの上に無造作に置かれたキャンバスの中の一つを、月明かりに照らして見つめた。
 美しいだけの風景画。
 自分が住んでいる湖畔を描いたもので、十分できの良い絵に思われた。きっとじいさんも、道行く人も美しいと思ってくれるだろう。
 しかしエリオットがその絵をテーブルの上に戻すと、一際美しいはずの絵は、他の同じように美しい絵の中ではなんの特徴も示さなかった。
 その日は食べるものもなく、貴重な蝋燭に火を灯すことも躊躇われたので、エリオットは早々にベッドにもぐりこんだ。
(明日こそ絵を売らないと、食べるものもキャンバスも買えない……)
 空腹を堪えながら、エリオットはぎゅっと両目を閉じて眠りにおちるのを待ったのであった。


 次の朝、エリオットは数枚のキャンバスと共に街へ向かった。途中でじいさんと合流し、二人はより街の中心部へと場所を移した。
 そこにはすでにたくさんの人が集まっていた。果物売りや、羽をむしった鶏を売っている男、エリオットのように絵を売っている者まで様々だった。
 二人はちょうどよさそうな場所を見つけ、昨日のように人形とキャンバスを並べていった。
 二人が選んだ場所。そこは、貴族や金持ちがよく訪れる宝石店の目の前だった。
「こりゃいいとこだ。この店は金持ちしか来ねぇ。もしかしたら宝石を買ったついでに、オレたちの人形や絵を買ってくれるかもしれねぇぞ」
「そうなったらしばらくはパンの心配をせずに済みそうだね」
 エリオットは、朝からぐうぐう鳴り続けている腹の虫の音を隠すためにわざと大声で答えた。
 金持ちや貴族は目が肥えているので、はじめは二人の人形や絵に興味を示すものはいなかったが、しばらくすると身なりの良い女がエリオットのキャンバスの前で足を止めた。
「この絵……似てるわ」
 女はまじまじとキャンバスを見て、独り言を言った。
「これを描いたのはあなた?」
「あ、はい。僕ですけど……」
「ふうん。この絵、気に入ったから買うわ。これだけあれば十分でしょ」
 エリオットが返事をする前に、女はエリオットの手に貨幣を握らせ、キャンバスを勝手に持って行ってしまった。
「おい! 待ち……」
「じいさん、落ち着いてっ!」
 その女の態度が気に入らなかったじいさんが、女を呼び止めようと立ち上がったが、エリオットはそれを止めた。
「よく見てよじいさん!」
 言われるがままにもう一度去って行く女を見ると、女はキャンバスを宝石か何かでも扱うかのように大切に抱えていた。
そしてどこか幸せに満ちた顔をしていた。さっきのきつい態度とは大違いである。
「なんでぇあの女」
「僕、嬉しいかも。あんなに絵を気に入ってもらったのは初めて」
「ったく、お前は人が良すぎるぜエリオット」
 しばらくぼうっとしていたエリオットだったが、すぐに右手に握らされた貨幣が金貨五枚であることに気づき、悲鳴を上げた。
「こ、こ、こんな大金今まで見たことないよ! じいさん、今日は二人でうまいもん食べに行こう!」
 エリオットがじいさんの方を見ると、じいさんは目を見開いたまま固まっていた。
「こりゃ……驚いた。世の中何があるかわかんねえ。エリオット、生きてて良かったな!」
「そんな大げさな」
 ハハ、とエリオットは力なく笑った。まだこれが現実だと信じられない。手に入れた大金のこともそうだが、自分の絵をあんなふうに気に入ってもらえたこともそうだった。
 その日売れたのはエリオットの絵一枚だけで、じいさんの気味の悪い人形は一つも売れなかった。
「オレは気にしねぇぞ。これからお前とうまいもん食いに行けると思うと気分がいいや」
 日が暮れ始め人通りもだいぶ減ってきた頃、人形を片付けながらじいさんが言った。
「何が食べたい? 久しぶりに肉がいいかな」
「そうだなぁ……肉、食いてぇな。でもよエリオット。肉もいいけど、そのきったないベレー帽もそろそろ買い換えろや」
「キャンバスを買ったあと、余裕があったらね」
「金貨五枚もありゃ買えるだろ」
 二人が笑いながら話していると、向かいの宝石店から人が出てきた。貴族や金持ちではない。宝石店に入るには似つかわしくない服装の男だ。
 男は真っ直ぐ二人のもとへやってきた。
「そこのじいさん、ちょっと頼みがあるんだが」
 どうやら男が用があるのはじいさんだったらしい。
 じいさんは、はいはいと面倒くさそうに返事をした。
「なんの用だい」
「お前、人形師だよな? いい人形があるんだ。いくらかで買い取ってくれないか」
 男は持っていた袋から人形を取り出し、じいさんに手渡した。じいさんはあまり興味がないようで、すぐにその人形をエリオットに渡した。
「どう思う?」
 エリオットは人形を一目見ると、その美しさに心奪われた。
 人形の腰までとどく長い金髪はとても滑らかで、エメラルド色の目は大きくて可愛らしい。笑っているのか泣き出しそうなのか分からない表情も好きだった。
なぜじいさんがこの人形に興味を示さないのか、不思議でならなかった。
「オレはこの人形、好きじゃねぇな」
「なぜ?」
「だってよ、なんか気持ち悪いじゃねえか。顔だって妙に人間くせえし、笑い方も不気味だぜ」
 じいさんの人形よりはマシだと言いかけた時、男もそれに賛同するように言った。
「そうなんだ……。この人形、身近に置いておくにはどうも不気味でな。捨てたら捨てたで何か起こりそうで……。どっかの人形師なら引き取ってくれると思ったんだがな」
 エリオットはじいさんの呪いの人形と、自分の手の中にある少女の人形を交互に見た。
 この男とじいさんの目は節穴か? どこからどう見ても少女の人形は美しいではないか。この二人に任せておいては、人形が焼却処分されるのも時間の問題だ。
 エリオットはすぐさま皮袋の中から金貨三枚を取り出し、男に差し出した。
「この人形、僕に売ってください!」
「正気かエリオット! やめとけ……せっかく稼いだ金じゃねえか」
 じいさんがエリオットを諭そうとしたが、男はすぐに金を受け取った。
「確かに受け取ったぞ」
 エリオットの気が変わるのを恐れるように、男はさっさと二人の前から立ち去って行った。
 じいさんはやれやれという顔でエリオットを見た。
「いいのか? そんな人形のために……」
「僕は後悔してないよ。こんなに美しいものが手に入ったんだ。満足さ」
 エリオットの言葉に、じいさんは訝しげな表情をみせた。
「んー……オレとお前じゃあ美的感覚が違うってことかね」
「そういうこと!」
 エリオットは売れ残ったキャンバスをまとめ、帰る支度をし始めた。
「おいおい、帰るのかよ」
「ごめん、じいさん。これで何か買って食べてよ。一月前のお礼だよ」
 すっかり支度を終えてから、エリオットはじいさんに金貨を一枚投げた。落としそうになりながらも、じいさんはなんとか金貨を手中におさめた。
「お前……」
「いつもお世話になってるからさ。じゃ、また明日!」
 じいさんの返事を聞く前に、エリオットは職人通りに向けて走り出した。残ったお金で食料とキャンバスを買うために行きつけの店へ向かう。
 最初に向かったのは美術品店だった。
「こんばんは、シャセリオさん!」
 店の主人であるシャセリオは、エリオットの姿を見るとにっこり微笑んだ。
「やあ、エリオット。しばらくだね」
 シャセリオは穴のあいていないベレー帽を被った、立派な画家だった。小さい頃、エリオットに絵を描く楽しさを教えてくれたのは他でもなくこのシャセリオであった。
「嬉しそうな顔をしているね。何かいいことがあったのかな」
 エリオットはすぐにカウンターに駆け寄り、目を輝かせて言った。
「はい! とってもいい絵が描けそうなんです。いつものキャンバスをもらえますか?」
「いいとも。ちょっと待っていなさい」
 そう言うと、シャセリオは店の奥からキャンバスを持ってきた。
「よし、これは君にプレゼントしよう」
「ほ、本当ですか?」
「そのかわり、何を描くのか教えてくれないかな」
 エリオットは自分の背嚢から例の人形を取り出し、カウンターに置いた。
「僕、人形の絵を描こうと思うんです」
「これは……とても興味深い品だね。どこの人形師が作ったのか知らないが、よくできている。特にこの青い目が美しい」
 シャセリオは人形を手に取り、髪の毛や、白くて小さな手をまじまじと見つめた。そのうちに、人形のドレスがところどころ解れていることに気づいた。
「美しい人形には、美しいドレスが似合うと思わないかい?
これではせっかくの彼女の美しさが台無しだ」
「でも、僕はドレスなんて作れません。絵なら描けるんですけど……」
 うーん、と唸ったまま、二人はしばらく黙ってしまった。
 しかしすぐにシャセリオがパチンと指を鳴らした。
「そうだ! 彼女に頼もう。おいでエリオット。今日はもう閉店だ」
 戸惑うエリオットを尻目に、シャセリオはさっさと店を閉め、外出用のコートを羽織った。
 笑顔のまま無言で手招きするシャセリオについて行くと、そこは国で一、二を争う高級な貴族御用達のドレス専門店だった。
「どうしたんだい。早く中へ行こう」
 シャセリオはなんの躊躇いもなく中へ入ろうとしていたが、エリオットは入口で固まってしまった。大金も持っておらず、この店に入るにふさわしい服装もしていなかったからだ。
 少し離れたところでシャセリオが「大丈夫だからおいで」と、叫んでいる。
 しばらくもたもたしていたエリオットだったが、最後には中に入ってみたいという気持ちが勝ち、シャセリオの背に隠れるようにして店に入った。
 店の中は想像以上にきらびやかであった。床に敷き詰められた高級な絨毯の上を恐る恐る歩いて行くと、これまた豪華なシャンデリアがある広い部屋に辿り着いた。店、というよりはどこかの貴族の屋敷のようだった。
 エリオットは落ち着かない様子で辺りをきょろきょろ見回した。
「あれ?」
「どうしたんだい、エリオット」
 エリオットは壁に飾ってある絵を指差した。
「これ、僕が描いた絵だ」
 その時、隣の部屋から若い女が現れた。パーティに行く時のような豪華なドレスを着ている。長い黒髪の美しさを引き立たせるように、宝石を散りばめた髪飾りをいくつもつけている。そのほかにも輝く宝石類を胸元、首、腕などに派手に身につけていた。
 女はつかつかと二人の方にやって来て、両手を腰に当てて言った。
「こんな時間になんの御用ですの?」
「やあ、セラ。今夜はまた一段と派手だね」
 シャセリオが笑顔で挨拶をすると、セラと呼ばれた女はよく通る高い声でキーキー叫んだ。
「やあ、じゃないわよお兄様! ここに入る時はその汚いベレー帽をとりなさいと言っているでしょう! あ、あなたはいいのよお客様」
 エリオットは今、まさにベレー帽に手をかけたところだったが、さっとその手を引っ込めた。
 セラはふん、とシャセリオにそっぽを向き、エリオットの前で優雅に挨拶をした。
「突然怒鳴ったりして申し訳ありません。私はこの店の店主セラです」
「あ、どうも……」
 セラの顔を間近で見たエリオットは思い出した。
この人は……!
「えと、セラさん?」
「はい」
「あそこにある絵を昼間買って行ったのはセラさんですよね」
 セラはもう一度エリオットの顔をよく見て目を丸くした。
「あ、あ、あなたはあの時の絵描きさん!」
 なぜかセラは顔を真っ赤にして焦っていた。
「セラ、エリオットの絵を買ったのかい?」
「き、気に入ったから買ったのですわ! お兄様には関係ないでしょ」
 ここへ来て、シャセリオに妹がいて、それがセラだということまでは理解できたエリオットだったが、なぜセラがこんなにも兄に冷たいのかは謎だった。
 すっかり機嫌が悪くなったセラだったが、頬を膨らませたまま、二人に茶を勧めたので好意に甘えることにした。
 客間らしき部屋に行き、これも豪華で大きなテーブルを囲み、使用人が用意した茶を一口すする。どうにもこうにも居心地が悪く、エリオットは何度も姿勢を正した。
「それで、今日はなんの御用ですの?」
「実は、エリオットがとても美しい人形を手に入れてね。君にその子のドレスを作ってもらおうと思って来たんだよ」
 自分の質問に答えたのがエリオットではなくシャセリオだったので、セラは少々眉を顰めた。
 自分からも頼まなければと、エリオットも慌てて口を開いた。
「あ、あの……本当に美しい人形なんですよ。きっとあなたも気に入ります」
 もたついた手つきで人形を取り出し、テーブルの上に置く。
「これなんですけど……」
「まぁ、これは驚いた。本当に美しいわ。たまにはお兄様の言うことも信じてみるものね」
 セラはじっくりと人形を見定めたあと、腕組みをし、エリオットではなくシャセリオに言った。
「いいわ。私がドレスを作ってあげる。報酬は?」
 その言葉に、エリオットはドキリとした。当然この報酬を支払うべきなのは自分で、シャセリオではない。しかし、セラに払えるほどの大金など持っていない。
 そんなことはとうの昔から知っているシャセリオは笑顔で答えた。
「もちろん私が払うよ。いくらかな?」
「シャセリオさん!」
 高額なドレスを簡単に買うと言ったシャセリオだったが、エリオットはシャセリオがそこまで金持ちでないことを知っていたので止めようとした。
 しかしそれよりも早く、セラが再び甲高い声で怒鳴りだした。
「まぁ、お兄様ったら私を馬鹿にしているの? この私があなたのような貧乏人から金貨をふんだくるとでもお思いなのかしら。失礼すぎますわ!」
 ただでさえよく通る大きな声で怒鳴られ、エリオットは耳を塞ぎたくなった。だが、そんなことをしたら命の保証はない。顔をしかめるくらいで我慢していたが、それでもセラは止まらない。
「あなたたちは画家でしょう? だったら絵を描きなさい絵を!」
 それならはじめから、報酬はお金じゃなくて絵でいいと言えばよかったのにと、エリオットは言いたくても言えなかった。
「さあ、いつまでここにいるつもりですの? 私は忙しいのよ。この人形のドレスも作らなければいけないし、他にも仕事はたくさん! 用が済んだらさっさと出て行ってくれなければ困りますわ」
 エリオットとシャセリオは追い出されるような形で店を出なければいけなかった。
 せっかく買った人形をここに置いて行くのは気がかりだが、次に自分のもとに戻ってくる時はもっと美しい姿だと自らに言い聞かせ、名残惜しそうに店を出た。
「仕上がったらお兄様のお店に持って行きますわ!」
 セラがそう叫んだのを最後に、二人はふう、とため息をついたのであった。
「びっくりしただろう?セラはいつもああなんだ。私のことが嫌いみたいでね……」
 真っ暗な夜道を歩きながら、シャセリオが苦笑まじりに言った。
「いったい何があったんですか?それに僕、シャセリオさんに妹がいるなんて初めて知りましたよ」
「話せば長くなるんだけどねえ……。そうだエリオット。うちに寄っていきなさい。どうせ昨日は何も食べていないんだろう?」
 シャセリオにそう言われた瞬間、エリオットの腹の虫が再び盛大に鳴った。
「決まりだね」
 シャセリオはクスクス笑っていたが、エリオットは自分の腹を両手でおさえ、顔を赤くしていた。
→2

TOP