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少年の旅路  4

  狼退治に行った次の日、ディアスとヨアンネスはまだ昼間だというのに街の酒場へやって来ていた。どうやら依頼人がここにいるらしい。
 窓がほとんどなく薄暗い店の中に入ると、奥で一人座っていた男が二人に向かって手を振った。
「おーい、あんたたち、こっちだ」
 ヨアンネスの格好を見て宮廷からやって来た人間だと分かったらしい。男のいるテーブルまで来ると、話を聞くために二人も椅子に腰掛けた。
 当然のようにヨアンネスの隣に座ったディアスの顔を見た瞬間、男の顔がさっと青ざめた。
「あ、あ、あんたは……!」
 指を指され、ディアスは訝しげな表情をする。
 この男、どこかで見たことがある。
 すぐには思い出せず顔をしかめていると、ヨアンネスが口を開いた。
「二人はお知り合いですか?」
 違うと答えようとして、ディアスはようやく思い出した。男と同じように人差し指を突き出し、ヨアンネスと男を交互に見ながら言った。
「こいつ、盗賊の親分だぞ!」
 そう、確か名前はビリー。依頼書にあった名だ。
「はて。そうなりますと、盗賊が盗賊退治を依頼してきたというおかしな事態になるのですが……」
 ヨアンネスがそう言うと、ビリーはこちらに向かって身を乗り出してきた。
「待ってくれ。とりあえずオレの話を聞いてくれよ」
 ディアスはヨアンネスと視線を交わし、勝手にしろとでも言いたげに椅子にふんぞり返った。何も盗られなかったとはいえ、盗賊に襲われた時はいい気分ではなかった。それでも、なんだか憎めない感じではあったので話だけでも聞いてやることにした。
「オレたちは街から街へと旅をする旅芸人で……」
 黙って最後まで聞こうと思っていたが、ディアスはふんぞり返っていた体を勢いよく起こし、語気を強めて言った。
「嘘つけ! 旅芸人が何でしがない旅人を集団で襲うんだよ!」
 憤慨しているディアスをなだめるように、ヨアンネスが苦笑しながらまあまあと、小さな声で言う。
「ビリーさんはディアスを襲ったのですか?」
 そう問われ、ビリーは申し訳なさそうに俯いた。
「あん時は悪かったよ。食料がどうしても足りなくて、数にものを言わせて脅かせばパンくらいは落としていくかなって思って……」
「なるほど。それで盗賊のふりをしたのですね」
 冷静に話を聞いているヨアンネスすら腹立たしい。ディアスは二人から顔を逸らすように頬杖をつき、人差し指でテーブルをとんとん叩いた。
 そんな態度をとるディアスだったが、ヨアンネスはにっこり笑ってビリーにこう言った。
「あ、彼のことは気にしなくて大丈夫ですよ。ちょっと機嫌が悪いですが、仕事のほうは問題なくこなしますから」
 ディアスがちっと舌打ちをする。ヨアンネスが一緒でなければ絶対に受けない仕事だ。
 ディアスの態度が気になりつつも、ビリーは話を続けた。
「旅芸人なんて、その日暮らしみたいなもんだろ? 安定はしないし金もないけど、唯一のいいところは三十七人の仲間がいることさ。だけど、仲間のうちの二人、マシューとトーマスが、悪いやつにそそのかされて本当に盗賊団に入っちまったんだ。金になるからって。あいつらが自分で選んだ道なら仕方ないって思ったけど、オレ、やっぱりほっとけないんだ。あいつらに盗みや人攫いができるわけない」
 相槌を打ちながら真剣に話を聞くヨアンネスだったが、隣のディアスはそっぽを向いたままぶっきらぼうにこう言った。
「ほっとけばいいだろ、そんなの。自分が行きたくて行ったんだ。盗みなんてすぐ慣れる」
「オ前モ泥棒ノ仲間ダモンナ!」
 不意に会話に乱入してきたベリアルに、ヨアンネスは苦笑する。ディアスも何か物を盗んだのだろうか。
 聞きたかったが、ビリーに不信感を抱かせてしまうのでここは話に戻る。
「ディアス、そんな言い方はよくありません。ビリーさんが仲間のことを心配されているのですから、ぜひ力になりましょう」
 そう言うと、ヨアンネスは勝手に依頼を正式に受諾してしまった。正式な依頼内容は、盗賊団に入ってしまった仲間二人の救出だ。
 二人が引き受けてくれるということで、ビリーは大変喜んだ。
「ありがたい! 二人のこと、頼んだぜ」
「私たちにお任せください」
 やれやれと思いつつも、ディアスは金のためだと割り切ることにした。それに、悪いやつが相手なら存分に剣を振るうことができる。
 ヨアンネスはビリーに、仲間の二人が入ってしまった盗賊団について尋ねた。
「その盗賊団の人数や、どこを活動拠点にしているかなど分かることはありますか?」
 グロムナートは広い国だ。王都付近だけでもならず者の数は相当いる。何か手がかりがなければ特定するのは不可能だった。
 ビリーは申し訳なさそうにヨアンネスに言った。
「オレもいろいろ調べてみたんだけど、アジトとか相手の人数とか、そういう大事なことは何も分からなかったんだ。でも、その盗賊団の親玉が無類の女好きで、夜になると街の酒場で女侍らしてるってのは噂に聞いたんだ」
 夜の酒場には、女を侍らせている男など吐いて捨てるほどいるだろう。酒場だって一軒や二軒では済まない。後のことはヨアンネスとディアスの二人で調査をしなければいけないが、これは骨の折れる作業になりそうだ。
 いったんビリーとは別れ、二人は盗賊について調査をするために再び街へ繰り出した。
 とりあえず目ぼしい酒場に行って聞き込み調査でもするのかと思ったが、ヨアンネスは酒場が立ち並ぶ通りを後にして別方向へ向かって歩き出した。ディアスはそれについて行くも、すたすたと歩くヨアンネスに問いかけた。
「酒場を調べるんじゃないのか?」
「それもいいですが……」
 ヨアンネスは歩みを止めずに言う。
「今回の件には女性が関わっています。夜の酒場に出入りしている女性に話を聞くのがよいでしょう」
「娼婦の知り合いでもいるのか?」
 何気なくディアスが尋ねると、なぜかヨアンネスは顔を真っ赤にした。
「い、いません! だけど、力になってくれそうな人はいます」
 真面目なヨアンネスが夜の酒場で娼婦と遊んでる姿なんて想像できないよなあと思いながらついて行くと、ヨアンネスは豪邸の前で足を止めた。
 門は開いているが、噴水と薔薇の花が敷き詰められたような庭の向こうに見える建物は、下級貴族の屋敷よりも立派に見えた。
 さっさと中に入ろうとするヨアンネスをディアスが引き止める。
「ちょっと待て。ここ、勝手に入ったら怒られるんじゃないのか?」
「心配ありません。ここはお店です」
「店?」
 中庭を歩きながら、ヨアンネスが説明をしてくれた。
「ここは女性のドレス等を作る専門のお店です。お店の名前はセラ。創業者の名前です」
 豪華な屋敷が店だなんて信じがたいが、屋敷の中に入ってみて納得した。玄関にはたくさんのドレスが並べられ、それを見にやって来ている客の姿があった。
 ドレスを買いに来たようには到底見えない場違いな二人を見つけた女性の店員が、奥の方から歩いて来る。
 長い金髪を大きな薔薇の髪飾りで留め、白いレースをふんだんに使ったピンクの派手なドレスを着ていた。
「あらあ?」
 貴族が持つような扇子を右手に持った彼女はそれで口元を隠しながら近寄って来た。
「これはこれは宮廷魔法使い様。今日もだっさいローブを着て、お仕事お疲れ様ですう」
 馬鹿にしたようにそう言ってお辞儀をした女性に、ヨアンネスは今まで見たことがないくらい困り果てた表情でこう言った。
「よしておくれよ、姉さん。好きでこんなローブを着てるんじゃないんだから……」
「そうなのお? 好きで着てるんかと思ったわあ。魔法使いってセンスないわよねえ。あなたもそう思わない?」
 女性にそう問われ、ディアスは思わず頷いてしまう。それを見た女性は扇で口元を隠し、笑った。
「おほほほほ! やっぱり外国の方もそう思うのねえ。これはもう、国家問題だわよお。何とかしないさい、ヨアン」
「私にそんな権限ありませんよ……」
 肩を落としてため息をつくヨアンネスの横で、ディアスは笑みを隠せない。女性はヨアンネスの姉らしいが、性格は全く似ていないようだ。
「それにしても、姉さん。よくディアスが外国の方だと分かりましたね」
 扇で口元は隠されているが、女性の目は笑った。
「分かるわよお。だって、その方が着ている服。そんな服はグロムナート中どこを探したって売ってないわよお。グロムナートに売ってない服を着ているってことはあ、外国から来たに決まってるわ。ま、お手製だったら話は別だけどお?」
 そう言ってまた「おほほほほ!」と笑う女性に、ディアスは苦笑するしかなかった。ヨアンネスの耳打ち情報によれば、彼女はドレスだけではなく、国中の洋服の情報を網羅しているらしい。
「あ、そうそう。自己紹介が遅くなっちゃったわねえ。私、セレナ。ヨアンの姉さんよお。あなたはヨアンの何かしら? 同僚? 友達? それとも恋人?」
「姉さん!」
 最後の選択肢はおかしいだろうとヨアンネスが抗議すると、セレナは流し目で二人を見た。
「えー。別に私驚かないわよお? 彼、かっこいいし? やかましい小娘が嫁に来るくらいなら彼と一緒になってくれた方が、姉さんは嬉しいかなあ」
 ヨアンネスもディアスも返答に困って黙っていると、セレナはまた一人で笑い出した。
「でもお、ヨアンには無理よねえ。だってえ、女の子とすら付き合ったことないもんねえ。真面目すぎてみんなドン引きよねえ」
「姉さん……」
 余計なことを暴露されて真っ白になってしまったヨアンネスは、涙こそ流さないが心で泣いた。ヨアンネスに彼女ができないのは、四割くらいは姉に原因があるからだというのに。
「なんか……姉がいろいろすみません。いつもこうなんです……」
 非常に申し訳なさそうに誤られたのと姉の言動に、ディアスは戸惑いながらもこう言うしかなかった。
「いや、いいんだ。大丈夫。問題ない」
 何がどう問題ないのかは自分でも分からないが、姉セレナの強烈な個性にディアスは圧倒された。
「立ち話もなんだしい、中へどうぞお。お茶でも入れるからねー」
 セレナが出してくれた紅茶のティーカップと受け皿には薔薇が描かれていた。紅茶を飲みながら、ディアスはセレナに尋ねた。
「薔薇がお好きなんですか?」
「もちろん好きよお。なんてったって、この国の国花ですもの。嫌いな人なんていないわ」
 黒竜族の国には国花なんてなかったな。
 そんなことを思いながらティーカップを見つめる。紅茶なんて飲んだのはものすごく久しぶりだった。
「姉さん、本題に入りたいんだけどいいですか?」
「何よお、改まっちゃって」
 セレナは扇を取り出し、ぱたぱたと扇いだ。
「実は今、仕事で調べていることがありまして。夜の酒場で働いている女性で知り合いはいませんか?」
 ヨアンネスがそう言うと、セレナはけらけらと笑った。
「なあに、女の子紹介してほしいなら素直に言えばいいじゃなあい。宮廷で働いてる偉い人に憧れてる女の子、いっぱいいるわよお。あ、もしかしてヨアン、モテるんじゃない?」
「違いますよ姉さん! 私は、その……じょ、女性との出会いを求めているのではなくて、人を探しているのです。それで、夜の酒場で働いている方の協力が必要なのです」
 紅茶と一緒に出されたクッキーをかじりながら、ディアスはヨアンネスのくそ真面目ぶりに笑いを隠せなかった。本当に女の子と遊んだことがないんだなあと思う。
「ふうん。で、誰を探しているの?」
「盗賊の親玉……」
 ヨアンネスが答えると、セレナは心当たりがあるのか急に表情を曇らせた。
「私それ知ってるかもお」
「本当ですか? それなら話が早いです。どこの酒場に行けば会えますか」
 居場所さえ分かればあとはとっ捕まえるだけだと思ったが、セレナは「無理無理無理!」と、笑った。
「お店に来る女の子から聞いた話だけど、その人、気に入った女の子としか口をきかないらしいわよ? その子も気に入られた一人だけど、その人が自分は盗賊の親分だって言ってるの聞いたみたいよ。本当かどうか分からないけどねえ」
 酒場の客は酒が入っているので気が大きくなってしまっている者が多い。勢いでありもしないことを言っている可能性もないわけではないが、これはかなり有力な情報だ。問題は、どうやってその客に接近するかだ。
 するとセレナが迷案を打ち出した。
「あなたたち、女の子になって夜の酒場へ行ってみたら?」
 一瞬何を言われているのか理解できずに二人がぽかんとしていると、セレナは応接室の扉を開けて、外にいる女性に向かって叫んだ。
「メロディ! ねえ、ちょっとこっちへ来て。この子たちに似合うドレスってあるう?」
「なあにセレナ。お客様?」
 セレナに呼ばれて応接室へやって来た女性は、これまたフリルをふんだんに使った水色の派手なドレスを着ている。フルリと派手なボリュームのドレスがこの店のデザインの特徴らしかった。
 メロディは座っているヨアンネスとディアスを見て当然ながら言葉を失った。メロディはセレナに耳打ちをする。
「あの二人にドレスを? そういう趣味の方たちなの? しかも、あなたの弟さんじゃない」
 長年この店で働いてきたメロディだったが、娼婦や平民の客はたくさん見てきても、男の客は初めてだった。
 セレナはにこにこしながらメロディの質問に答える。
「そうなのよお。せっかくだから、うんと可愛くしてあげたいじゃない? だからあ、あなたも手伝って! お願い」
「分かったわ。セレナ。ドレスを持ってくるわね」
 メロディがドレスを持ってくるために部屋を出ようとすると、セレナが慌てて付け足した。
「あ、そうそう。ドレスの色なんだけど、ピンクとブルーでお願いね」
 しばらくして戻って来たメロディが持ってきたのは、白いフリルが可愛らしいピンクの派手なドレスと、腰に大きなリボンがついた青い派手なドレスだった。派手ではないドレスはこの店には置いていないようだ。
「メロディありがとー。完璧なドレスね!」
「いいえー。私、お化粧道具持ってくる」
 メロディが再び部屋を出て行くと、セレナはヨアンネスとディアスにドレスを突き付け、「着替えはあちらよ?」と、カーテンのあるスペースを指差した。
 ここでようやくヨアンネスが口を開く。
「いやいや、姉さん! 冗談ですよね?」
 ヨアンネスに続き、ディアスも困り顔で言う。
「私も女装はちょっと……」
 乗り気でない二人だが、セレナに睨まれ口を噤んだ。
「なによお。私がせっかくドレスを準備してあげたんだから黙って着なさいよ。盗賊をとっちめたいんでしょ? そのままの格好で酒場に行ったって相手にされないわよ?」
 二人は返す言葉もなく、着替えをするためにカーテンの向こう側へ放り込まれた。
「ヨアン、あなたはピンクね!」
「え? 私、ピンク? ピン……。えー……」
 強制的に一番可愛い色に決められてしまったヨアンネスは、セレナに身ぐるみ剥がされ、戻って来たメロディと二人がかりでコルセットを絞められた。
「男にコルセット絞めたの初めて!」
 なんだか嬉しそうにセレナが言うと、メロディもだんだんその気になってきてコルセット絞める手に力が入る。
「せっかくやるなら、女の子よりも可愛くしなきゃね」
 コルセットを絞められてだんだん顔が青くなるヨアンネスを見て、ディアスは一人震え上がっていた。
 次は自分の番だ……!
 耳元ではベリアルが大笑いをしているが、ヨアンネスにも聞こえているだろうか。コルセットのせいでそれどころではないかもしれない。
 ドレスを着終わると、ヨアンネスは目にちょっと涙を浮かべながら無理に笑ってディアスに言った。
「……似合ってますか?」
 似合っているか似合っていないかと聞かれれば、ピンクのドレスはヨアンネスに驚くほどよく似合っていたので、ディアスはぎこちなくも頷いた。
「うん。違和感ないかな」
 喜んでいいのか悲しんでいいのか分からず、ヨアンネスは力なく微笑んだ。
「さあ、次はあなたよ」
 ディアスはヨアンネスと同じように服を脱ぎ、二人がかりのコルセット攻撃が始まった。
 セレネとメロディの二人がコルセットを締め上げると、ディアスは体の内臓物が口から出てくるのではないかと思って顔をしかめた。
 きらびやかなドレスを着ている女性はみんな、この苦しみに耐えているのだとこの時初めて思い知らされた。
 ドレスを着ると、セレナは二人に鏡を見せてくれた。
「見て。二人とも、とっても似合っているわ」
 鏡の前に立ち尽くす二人。
 どこからどう見ても、二人の姿はただのドレスを着た男だった。これでは笑い者だ。
 すると、メロディが何やらいろいろな物が詰め込まれていそうな箱を持って来て、二人に見せた。
 箱の中には小さな鏡や髪をとかすための櫛、そして何に使うのか全く予想のつかない物がたくさん詰め込まれていた。
「ドレスを着たらお化粧をしないとね」
 メロディはそう言って、ディアスの顔に謎の粉をはたき始めた。
「げ、げほっ」
 ぱたぱたとはたかれる粉を吸い込み、ディアスが咳き込む。隣ではヨアンネスもセレナに同じことをされていた。
「腕がなるわね、メロディ」
「ええ。どこまで可愛くできるか、私たちの腕の見せ所ね!」
 顔に粉をはたいたり髪を結ったりすること数時間、ディアスは手渡された手鏡を見て驚愕した。
「おお! まるで別人だ。これは驚いたなあ」
 もともと長った黒髪を結い上げこれでもかと化粧をした顔は、自分ではないみたいだった。思ったよりもいい仕上がりだったので、ディアスはすっかり満足した。
 頭に花飾りをつけられたヨアンネスは、複雑な表情で鏡と睨み合っている。
 二人を見事な女に仕立て上げたセレナとメロディは満足気だ。
「完璧だわ。これなら盗賊を騙せるはずよ」
 盗賊と聞き、メロディははっとしたように口を開く。
「盗賊って、酒場によく来るって噂の? 二人は盗賊を倒しに行くの?」
「そうよ、メロディ。二人はこれから酒場へ乗り込むの!」
 メロディは驚いたいものの、冷静に今後のことを考えた。
「それなら酒場に話を通しておかなくちゃいけないわ。誰かに頼んで来る」
 ぱたぱたとメロディが出て行くと、セレナはまだ鏡を見ているヨアンネスとディアスに向かって力強くこう言った。
「さあ、二人とも。しっかり頑張るのよ。私とメロディがここまでしてあげたんだから、ヘマしないでよねえ?」
 もうこんな恰好をしている時点でだいぶヘマをしている気もするが、他に良い手があるかと問われれば思いつかない。
「仕方がありません。ドレスも着てしまったことですし、姉さんの作戦に乗りましょう」
「そうだな。それに……」
 ディアスはいろんな角度から自分の顔を見た。
「悲観するほど悪くないぞ、これ」
 苦笑するヨアンネスだったが、ディアスは案外この作戦が上手くいくような気がしていた。
つづく
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